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【book_24】文章のなかに隠れている魅力とは何か?

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どうも、つんどくです。

今回は村上春樹「風の歌を聴け」の感想とともに、著者が描く魅力とは何なのかを考えていきます。

 あらすじ

一九七〇年の夏、海辺の街に帰省した〈僕〉は、友人の〈鼠〉とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。二人それぞれの愛の屈託をさりげなくうけとめてやるうちに、〈僕〉の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。群像新人賞受賞。(背表紙より)

話は全体的に淡々と進んでいくが、生活感を感じ取れる描写にどこか魅力を感じる作品だった。160ぺージという文量を感じさせないほどの読み心地が読者をさらに作品の世界に引きずりこんでくれる。

魅力的なポイント

ハルキストと言う言葉ができてしまうぐらいに、村上春樹のファンは多い。

では村上春樹の描く作品は何故ここまでに人々を魅了するのか?

登場人物

 主人公はもちろん、その周りに登場する人物たちがすごく魅力的だ。

今回の「風の歌を聴け」では友人の鼠やバーテンのジェイ、左手の指が4本しかない女性などの人物が日常生活のなかで描かれているシーンはまるで映画を観ているかのようにキラキラしていて、そのひとりひとりが物語のなかで強く生きていることを感じさせる。

会話のキャッチボール

「おいしかった?」

「とてもね。」

彼女は下唇を軽く噛んだ。

「何故いつも訊ねられるまで何も言わないの?」

「さあね、癖なんだよ。いつも肝心なことだけ言い忘れる。」

「忠告していいかしら?」

「どうぞ。」

「なおさないと損するわよ。」

「多分ね。でもね、ポンコツ車と同じなんだ。何処かを修理すると別のところが目立ってくる。」

彼女は笑って、レコードをマービン・ゲイに替えた。 (P.92より) 

会話のひとつひとつが慎重で、でもどこか駆け引きのようなこの会話をお互い楽しんでいるように感じた。

言葉選びがとても憎い。私の人生でもこんな女性に会えたらな、と考えていたがきっと知的でユーモアがあって多少イケメンじゃないとこういう女性と楽しくキャッチボールすらできないじゃないか。

結局は自分の生き方次第なんだなと再認識させられてしまった。さらに憎い。

スピード感

 初めと終わりは語りが多く、読むスピードは遅めだった。しかし中盤になり会話が増えてくるとスピードは上がり、ページをめくるのが早くなる。このバランスが読者にとって読み心地の良いものとしている。

読むリズムがちょうど良いと読者は読むのを止められなくなる。ページがどんどん進むごとにアドレナリンのようなものが頭の中ではじけているのだ。

おわりに

作品の冒頭では著者自身の文章を書くことについて述べられているのではないだろうか?文章を書くのは辛くて苦しい。しかし楽しい。考えても考えても思い浮かばない1行に苦悩しているのに書き続けるのは、やはりそのなかでも楽しさや幸せな何かが確かに感じ取れるからなのではないだろうか?

記念すべき村上春樹のデビュー作「風の歌を聴け」おススメです。

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