どうも、つんどくです。
何か不安に駆られて眠れない夜がある。横になっていればいつかは寝れるだろうととりあえず横になり、毛布にくるまるが一向に眠気は来ず。
この眠れないで過ごす夜に襲い来る漠然とした不安。それに対して行動しなくてはいけないとわかっているが行動ができない自分に対しての葛藤。
時間は少しづつ過ぎていき、気が付くとただ何をすることもなく横に倒れたまま窓から光がさしてくる。
そんな漠然とした虚無感を感じていた私の心情が、この作品の主人公である彼女の心情に通じるものがあったのでしょう。ほんの数ページと開いたが最後、私自身の行方を見守るようにしてとうとうページがめくれなくなってしまった。そんな早朝4:30。この感情を忘れないようにキーをただ無心で叩いている。
山本文緒 著「眠れるラプンツェル」をレビューです。
真冬の青空はどこまでも澄み渡り、洗濯した白いシーツが北風にはたはたと音をたてている。(P.209 より)
この文章が出てくる前後に主人公である彼女がどれほどの苦悩や葛藤を抱えているかは決して想像できない。しかし、嵐の中で急に晴れるようなこの場面が私の中で一番印象に残っている一文なのだ。
家に引きこもりがちな専業主婦がある日、少年と出会いそこから展開が良くも悪くも進んでいく。
暗闇に立ち尽くす人々の心情は、たとえ涙を流しもがき苦しんでいても他人からは見えないものだ。それでもどうすればいいのか分からず、毎日を過ごしている人々にとって主人公である彼女の切ない感情はどこかあなたの日々過ごす感覚と似ているところがあるのかもしれない。
それゆえ、彼女の一文一文が妙に心に訴えかける。
決して不自由のない暮らし、しかし自分自身が本当に欲しているなにかは永遠に手に入らないものなのかもしれない。どこかで諦めている自分。
今までの息が詰まりそうな世界にただただしかたないと見て見ぬふりをする現実に内心の私はどこかで「それが普通なのだ」と語りかけている。
それ故にふと気を抜くとやってくるなんでもない空気からの虚無感は、ただただ辛くどうしようもできない。
自分と葛藤するぐらいの恋愛は普段はしないのかもしれない。しかし、自分でも止められないくらいの感情が湧く恋愛をしていた彼女は確かに全力でもがき苦しみながらそれでも生きていた。
彼女は魔法の髪など持っていなかった。しかし、彼女は自らの脚で塔から飛び出していた。